声の出し方は人それぞれ違うという観点から、個人レッスンが最適というお話をしました。そして、私が特に大切に思うことは、言葉です。
実は、ボイストレーニングに於いてある一つの到達点である「身体に無理なく発声する」ということは、歌をうたう上で極めて基礎的な事項であるが故に、どんな人にもそこに到達して頂きたいのですが、そこで難問があります。
それは、声の出し方と同様に言葉というものの捉え方が、人それぞれ違うのです。言い換えますと、言葉の意味の理解の仕方が違うのです。例えば、5月のある日、ある人は暑いと言い、ある人は暖かいと言います。感じ方の違いで言葉遣いが変わりますし、実は「暑い」という一言で想起されるイメージも人それぞれなのです。ですから、出来るだけ言葉を言い換えて、その人のイメージが、私の言っていることに近くなるように努めることが必要です。この事も、個人レッスンに有効性があることを示すと思います。
お気づきの方もいらっしゃることでしょう。厳密に言えば、上述の「身体に無理なく発声する」という言葉の意味も、これを読んでいる方それぞれが感じとり方に違いが生じて当然なのですが、ここでは深く追求しないでおきましょう。